アフガン国際戦犯民衆法廷 （同民衆法廷自体のご案内は、末尾に掲載してあります） ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ９ 劣化ウラン弾による民間人攻撃 本法廷で取調済みの各証拠により、アフガンニスタンにおいて、劣化ウラン弾が使 用されたことは既に明らかである。 （１）劣化ウラン兵器とは何か。 ア 劣化ウランの生成 劣化ウランは自然界に存在する物質の中で最も重く、鉛の約１．７倍である。 また、放射能毒性と重金属毒性を併せ持つ、極めて危険な物質である。このウラン は、核爆弾や原子炉の製造に利用される。 ① 天然に産出されるウランの中において、核分裂を起こすウラン２３５は０．７ ２％しか含まれておらず、そのほとんどは核分裂の起こりにくいウラン２３８であ る。 さらに、ウラン２３４が０．００５４％を構成している。このため、原子力発電所や 核爆弾で使用できるようにするためには、ウラン２３５の割合を増加させる作業が必 要である。この作業を「濃縮」というが、この濃縮作業を行う際に生ずる残存物が劣 化ウラン（減損ウラン）である。 劣化ウランにおいて割合を高められたウラン２３８は、核分裂物質としては不要であ る。しかし、放射性を持つことは変わりはない。劣化ウランは、依然として、例えば 鉛が持つ放射性の６５，０００倍の放射性を有する。 そして、その半減期は４５億年であり、人類の歴史に比すれば、永遠に放射能を出し 続けるといっても過言ではない。 ② また、劣化ウランは、使用済み核燃料からプルトニウムを抽出する作業から作り 出されることがある。具体的には、コロラド州ボルダーのロッキーフランツ核兵器工 場などで、そのような作業が行われている。 そこでは天然ウランに存在するウラン２３８，２３５，２３４という三つの同位体に 加えて、０．００３パーセントの割合でウラン２３６という人工の同位体が劣化ウラ ンに加えられる。ウラン２３６の半減期は２４００万年で他のウラン同位体に比べて 比較的短いが、より半減期の長いウラン２３８や２３５よりも強い放射能を放つ。 使用済み核燃料から作り出された劣化ウランは、天然ウランから作り出された劣化ウ ランと比べれば、総活動量で０．１５％、アルファ線量にして０．５％高い性質を有 する（甲１３９）。 イ 劣化ウラン兵器 劣化ウランが最も大規模に利用されているのが軍事兵器である。 劣化ウランは、貫通力が高く、また極めて安価（１トン/１ドル程度）であることか ら、砲弾、銃弾、榴弾の弾頭や戦車装甲などに広く利用されている。 さらに、劣化ウランは巡航ミサイル、バンカーバスター弾の貫通体・平衡錐として使 用されている。劣化ウラン兵器として知られるのは、２５㎜砲弾（ブラッドレー戦闘 車の連装銃）、３０㎜砲弾（A10攻撃機戦車キラー搭載砲）、１０５㎜砲弾（M1戦 車、Ｍ60戦車）、１２０㎜砲弾（Ｍ１A1戦車、戦闘ヘリコプター搭載砲）、硬化目標 攻撃用誘導兵器（バンカーバスター等）などである。 例えば、米空軍攻撃機Ａ１０搭載の３０ミリ砲ＰＧＵ－１４／Ｂの貫通芯は、９９． ２５％の劣化ウラン、０．７５％のチタンからできている。 軍事分析ネットワークである「ジェーン・ディフェンス」は、ＰＧＵ－１４／Ｂを含 む１４種類の劣化ウラン兵器をアメリカが保有していることを公表し（甲１３９）、 イギリス人研究者ダイ・ウィリアムズは、「アメリカ科学者連盟（ＦＡＳ）」、 「ジェーン・ディフェンス」のデータを分析したうえで、アメリカの保有する２３種 類の兵器が劣化ウランを貫通に含んでいることを指摘した。 この中には、アフガニスタンで使用された、ＧＢＵ２８－３７（貫通体ＢＬＵ－１１ ３）いわゆるバンカーバスターを初めとする、アフガン戦争で使用された多くの兵器 が含まれている。 （２）アフガニスタンにおける劣化ウラン兵器の使用 ア 使用の事実 アメリカは、攻撃機,AH-64アパッチ攻撃ヘリ,新型巡航ミサイルCALCM等により、劣化 ウランを運搬し、A10攻撃機,AH-64アパッチ攻撃ヘリに搭載のバルカン砲により PGU-14APIウラン焼夷徹甲弾を、またF-15戦闘攻撃機よりバンカーバスターを投下す るなどして、２００１年１０月以降、少なくとも５００～６００トンもの大量のウラ ン兵器を、トラボラ、パクティア、クンドゥズ、マザリシャリフ、ナンガハル、コー スト、カブール（バグラム周辺）等アフガニスタン全土で使用した。 イ 兵器からのアプローチ 検事団が証拠提出し、本法廷において取調済みの、マーク・ヘロルド、ダイ・ウィリ アムスの研究（甲１１８，１１９）は、上記各使用を裏付けるものである。 即ち、劣化ウラン兵器として使用されている ウ アメリカ当局の自認 ２００１年１２月初旬、ワシントンにある国防情報センターの最高顧問フィリップ・ コイルは、劣化ウラン弾がアフガニスタンで使用されていることを認めた。 ２００２年１月１６日、ラムズフェルト米国国防総省長官は、ブリーフィングにおい て、アフガニスタンのジャララバード周辺で高濃度の放射能汚染が確認されたことを 自ら認め、「アルカイダの大量破壊兵器保有を示すものではなく、劣化ウラン弾によ るもの」と認めた（甲122）。 アメリカは、アフガニスタンにおいて、これ以上の公的見解を明らかにしていない。 しかしながら、アメリカが湾岸戦争、バルカン戦争、コソボ紛争でいずれも劣化ウラ ン弾を使用しつづけてきたこと、上記戦争で使用された兵器とほとんど同じ、通常劣 化ウラン貫通体が装着されている兵器がアフガニスタンにおいても使用されているこ とに鑑みれば、アフガニスタンにおいて、劣化ウラン兵器が使用されたことは疑いよ うのない事実である。 エ 劣化ウラン弾使用は明らか さらに、後述する、ウラニウム・メディカル・リサーチ・センター（ＵＭＲＣ）のア フガニスタン調査結果（甲１２０）、及びアフガンＤＵリカバリー・ファンドのモハ メッド・ダウド・ミラキ氏のレポート（甲１３７，１３８）が指摘するアフガニスタ ンにおける被害の状況に照らせば、米軍によるアフガニスタンにおける劣化ウラン弾 使用は明らかである。 （３）劣化ウランの人体及び環境に与える影響 ア 劣化ウラン弾の毒性 ① 劣化ウラン弾は強い毒性を有する物質であり、人体に与える影響は極めて恐るべ きものである。 劣化ウラン弾は、攻撃対象への貫通時に衝撃で高熱を発して燃焼し、燃焼と同時に ０．００１～０．１ミクロン単位、あるいは１０オングストローム単位の微粒子の酸 化ウランとなって周囲に大量に放出され、拡散する。このような微小単位の不可視の 劣化ウランは、砲弾一個で半径４００メートル近くも飛び散る。そして、広範囲の空 気、土壌、さらに水等環境を汚染する（甲１３２，１５６，甲１６１）。 放射能の雲となり数千キロも移動し、砂漠地帯では地上に落ちても風で何度も舞い上 がり広がることで周辺住民を被曝させる。また水に溶け、土壌の中に入り込んだり、 作物を通じて人体に入り込む。 劣化ウラン（ウラン２３８）の半減期は４５億年と超長期であることから、一旦汚染 された地域は百年、数千年にわたって、事実上永久に汚染され続ける。 ② 劣化ウランの放射能は天然ウランの６０パーセントに相当し、その放射能の９ ５％はアルファ線として放射される（甲１６０ ＩＰＰＭＷ報告書）。劣化ウランは アルファ放射線放出物質である。 アルファ線は、ガンマ線と比べ、人体貫通力は極めて弱い。しかし、アルファ線を放 出する劣化ウランは、ひとたび人体に吸い込まれると、極めて深刻な体内被曝を引き 起こす。即ち、長期にわたって放射能性粒子が人体にとどまりつづけ、微粒子が１７ 時間に一度の割合で体内で放射能を放ちつづけることとなる。また、劣化ウラン弾に 含まれる重金属も、発ガン性を含む毒性を多く含むものである。 琉球大学の矢ケ崎克馬教授によれば、１μｍの劣化ウラン粒子は、癌を引き起こす完 全な能力を保有している（甲１５７，１５８，１５９）。 こうして、劣化ウランは、人体にひとたび入り込めば、細胞や遺伝子を変容させ、リ ンパ節を通じて全身に影響を及ぼし、癌、白血病、リンパ腫、遺伝子異常、先天性異 常児出産を発生させつづける（甲１３０，１６０等）。 ③ 劣化ウランは戦争中に、劣化ウランの粒子を吸い込んだ兵士たちに甚大な健康被 害をもたらすだけでなく、戦争が終わった後も、およそ気の遠くなるようなウランの 半減期の期間を通じて、土壌・大気を汚染しつづけ、大気を吸いつづける人々、土壌 から作られた食物を食べる人々の身体に侵入し、土壌を通じて汚染された水を飲む 人々の体に侵入し、広範な人々の身体を無差別に蝕み、癌・白血病患者、癌・白血病 死者、先天性異常出産を産み続ける。 イ 湾岸戦争におけるイラク人への人体影響 ① 第一次湾岸戦争では、米国防省の発表によっても３２０トンものウラン兵器がイ ラク南西部で使用されているが、その後、戦場に近いイラク南部の諸都市で、癌・白 血病が３～７倍に増加しているという深刻な実態が明らかにされている。特に、１９ ９９年以降は、急激な勢いで癌・白血病の発生が増加している。 また、湾岸戦争後に産まれた子供達に、眼・耳・鼻・舌及び性器の変形あるいは欠損 といった先天的障害が頻繁に現れ、極めて深刻な事態をもたらしているほか、１９９ １年から１９９７年にかけて行われた調査では、これらに加え、深刻な免疫不全に よって引き起こされた感染症の大幅な増加、AIDS様の症状、重い疱疹の多発、腎臓と 肝臓の機能障害の多発が見出されている。ウラニウムは、細胞分裂が活発であればあ るほど、細胞の損傷を発生させやすいことから、子どもの罹患が特徴的である。 ② これら深刻な被害の実情は、イラク人医師で実際に、癌患者、小児癌患者の治療 にあたり、先天性異常出産に立ち会っている アルアリ医師、 ジャナー ン医師の証言からも明らかである（甲１２５）。 湾岸戦争から１０年以上たった今日、イラクでは罪もない人々、特に子どもたちが劣 化ウラン弾によって苦しみつづけ、そしてその患者数は急増しつづけているのであ る。毎日のように、小児癌や白血病で子どもたちが死に、毎日のように、先天性異常 の無脳症、水痘症、奇形等の子ども達が生まれ、そして死んでいるのである。 ウ 劣化ウラン弾汚染地域からの帰還兵への人体影響 劣化ウラン弾の健康影響は、湾岸戦争やバルカン戦争に従軍した兵士の身体異常発生 からも明らかである。 ① １９９４年～１９９５年までの間、ペンタゴンの劣化ウラン弾プロジェクトの責 任者を努めたダグ・ロッキー氏は、第一次湾岸戦争の主として劣化ウラン弾被害によ り、１９９０年８月～２００２年の５月までに２２万１０００人の元米兵が障害者と 認定され、１万人以上の米兵が死んだ、と証言している（甲１３４）。湾岸戦争に参 加した米軍兵士は６９万６０００人のうち、劣化ウランによる汚染地帯に身を置いた 兵士は４３万６０００人とされる。このうち、約半数以上の帰還兵が身体障害者と認 定されているのである。 ② その身体障害者の１人、Carol Picou軍曹は、湾岸戦争で、劣化ウラン弾の使わ れた戦場で何の特別の防備もなく任務にあたり、数週間後には排尿の調整が出来なく なるなど、深刻な身体症状を呈するに至った。彼女は現在、身体障害70%という理由 で軍を退職しているが、主治医によれば、左視床腺への血液供給が激減し、また記憶 や視覚、言葉を左右する左脳に神経障害があると診断した。彼女はさらに、呼吸器官 の障害、腹部膨満、顔や首の発疹、定期的な発熱に悩まされ、今もって腸や膀胱のコ ントロールができない。（甲１２４，１２９）。また、ミシシッピ州の復員軍人援護 局の調査によると、湾岸戦争帰還兵251人を対象にした調査で、67%の子供が、深刻な 病気で苦しみ、また目や耳がなかったり、血液感染症、呼吸器障害、指の融合などの 奇形児として生まれていることが明らかになっている（甲１２９）。 ③ カナダ人で湾岸戦争に兵士として従軍したテッド・リオドン氏は、期間直後から 体に異変を覚え、最後は全身の痛みに襲われ、１９９９年４月、４５歳で亡くなっ た。リオドン氏は、生前に尿から大量の劣化ウラン弾が検出されていたが、遺書で臓 器の検査を 独立研究機関であるウラニウム・メディカル・リサーチ・センターに委託、調査の結 果、肺や甲状腺、骨から大量の劣化ウラン弾が検出された（甲１３５）。 ④ このほかにも、湾岸帰還兵の深刻な身体障害については、数多くの証言がある （甲１６１「知られざる被爆者」）。米軍及び政府の圧力により、帰還兵の声は抑え られ、多くの被害が隠蔽されているものの、帰還兵の多くが劣化ウラン被害に苛まれ ていることは、明らかな事実である（甲１２４）。 ⑤ また、バルカン戦争、コソボ戦争に従軍した兵士にも同様の劣化ウラン弾による 身体被害が現われている（甲１３３）。 エ 疫学的因果関係は明白 以上のイラク人被害、湾岸、バルカン、コソボ帰還兵に共通する身体被害は、劣化ウ ラン弾と人体影響に関する疫学的因果関係を明らかにしている。 しかるに、アメリカは、明白な事実と被害にも目をつぶり、劣化ウラン弾の健康被害 について、一切認めようとしないのである。 （４）アメリカによる劣化ウラン弾の危険性の認識と隠蔽 ア アメリカの認識 アメリカは、劣化ウラン弾の人体影響を全面的に否定している。しかし、アメリカ は、実際は、劣化ウラン弾がいかに人体にとって危険な兵器であるかを熟知してい る。 アメリカは、１９４３年から劣化ウラン弾の危険性を熟知し、その後も劣化ウラン 弾の人体影響をひそかに調査・研究しつづけてきた。そして、十分な危険性を知りつ つあえて戦場で使用したものである。 イ １９４３年グローブス将軍へのメモ ① １９４３年、マンハッタン計画に携るアメリカ、グローブス将軍に対し、同将軍 のもとで働く３人の最も優秀な物理学者、Ａ．Ｈ．コンプトン博士、ジェームズ． Ｂ．コナント博士、及びＨ．Ｃ．ユーレイ博士から１９４３年１０月３０日付のメモ が送られている。 甲 は、まさにそのメモであり、 ５０年余を経て軍事機密の指定解除となったも のである。このメモには、劣化ウラン弾が軍事的に有用な兵器として紹介され、軍事 的に是非利用するようにと勧められている。 ② このメモは、劣化ウラン弾につき、「放射性物質が粉塵から煙霧にいたるミクロ サイズの微粒子に粉砕され、地上砲火発射体、陸上用車両、または航空爆弾によって 撒き散らされるようにする。この微粒子は人間によって吸い込まれる。放射性物質が 吸い込んだ人間ひとりを死なせるのに必要な量は、極めて微量である。人体に蓄積さ れる１／100万グラムが致死量であると推測される。これの被害者に対する治療方法 は不明である。 以下２つの要因が、兵器としての放射性粉塵または煙霧の効果を上げると思われる： (1) 五感によって感知されない。 (2) 粉塵または煙霧は微粒子状態で拡散されるため、普通のガスマスクのフィル ターに通過し、極度に甚大な被害を引き起こすであろう。」と紹介する。 ③ 次に、このメモは、劣化ウラン弾の人体・環境影響について、「放射性粉塵や煙 霧によって汚染されている地域は、汚染濃度が十分高く保たれる限り危険であろう。 又、これらの物質は処分されて吸入の代わりに摂取によって体内に取り入れられるこ ともある。貯水池や井戸は汚染されるだろうし、食物も、粉塵や煙霧を吸い込んだ時 に引き起こされる場合と同様な有害な影響を及ぼす毒に汚染されることになろう。」 と説明し、「１ミクロン以上の微粒子は鼻、気管、気管支に付着され、それから毎分 １/２-１cmの速度で内壁の粘液と一緒に運搬される率が高い。１ミクロン以下の微粒 子は肺胞に堆積し、そこに永久に留まっているか、リンパ腺か血管に吸収される率が 高い」として、呼吸器系の障害を指摘する。 さらに、「汚染された水や空気、食物を通じて消化管に入り込むことができる。これ らの物質は空中から、鼻の粘液、喉、気管支などに付着して、飲み込まれるだろう。 その影響は気管支において見られた様に、局部の刺激症状(炎症)であろう。 これら の物質は胃、盲腸、直腸には、他どの器官よりも長期間残存し、これらに影響される 率が非常に高い。 放射能被爆のいかなる一般的症状さえも見られずに、腸に穿孔や 腫瘍ができて死に至ることも考えられる。」「ベータ線やガンマ線を放出する核分裂 生成物は肺や消化管から血管に吸収され、全身を巡るかもしれない」と指摘してい る。 ④ このようにマンハッタン計画に携る科学者は、１９４３年当時から、劣化ウラン 弾の危険性が極めて高いことを詳細に研究し、アメリカ政府中枢に報告されていたの であり、アメリカ政府中枢はこの事実を熟知していたのである。 ウ １９７４年～１９８９年までの米国内における研究(甲１５２) ① 甲１５２はアメリカがウェブサイトで公開している、アメリカ政府機関等が行っ てきた劣化ウランに関する研究である。アメリカは、湾岸戦争での劣化ウラン弾投下 後、劣化ウラン弾の危険性を否定する報告書を発表し（甲１５１）、その添付書類と して、過去の劣化ウランに関する研究結果のリストを公開した。公開されたのは研究 結果のリストと概要のみであり、その研究報告そのものは、未だ軍事秘密として公開 されていない。 ② 甲１５２に列挙された研究レポートは全て劣化ウランに関するもので、アメリカ がひそかに劣化ウランに関して膨大な研究を行い、収集していたことが明らかになっ ている。 研究報告が秘匿されているものの、甲１５２に記載されたリストに記され た概要からも劣化ウラン弾の危険性が詳細に報告されていることが認められる。 エ １９９１年ロスアラモス・メモランダム 甲１２７号証は、米国の核兵器研究機関であるロスアラモス国立研究所が関係政府 諸機関にあてた警告文書である。ロスアラモス国立研究所は、１９６０年代から、旧 ソ連の対戦車用兵器として劣化ウラン弾の研究に乗り出した研究機関である。 このメモには、イラクの戦場でＡ－１０などの劣化ウラン弾兵器のもたらした効果が 非常に高かったことを指摘し、劣化ウラン弾の環境への衝撃は大きいものの、戦場で 有効である以上これを使いつづけるべきであり、有用な武器を失わないために、さら によい兵器が開発されるまでこの兵器が存在し続けることを保証する必要がある、こ の極めてセンシティブな問題を心に留めておかなければならない、と記載されてい る。 即ち、劣化ウラン弾がいかに人体への毒性を有していても、有効な兵器である以上研 究者らはこのことについて口をつぐみつづけよう、という趣旨の警告文なのである。 オ １９９３年１９９１年８月１９日のメモ（甲１２８） エリック・シンセキ将軍が作成したこのメモは、国防副長官が陸軍に対し、①劣化ウ ラン弾の危険性を指摘し、②劣化ウラン弾で汚染された兵器に接触する兵士への劣化 ウラン弾汚染予防のための訓練、被害者のメディカル・チェック、メディカル・ケア をしなければならないと命令し、③劣化ウラン弾で汚染された兵器のクリーンアップ をすべきだと命じたこと、が明確に記載されている。 このメモは、当時、政権中枢にいる国防副長官が劣化ウラン弾の危険性を熟知してい たことを明白に物語っている。 カ １９９４年以降のペンタゴンの劣化ウラン弾プロジェクト ① ジャクソン・ビル州立大学の物理・地球科学部教授で、陸軍少佐（予備役）であ る、ダグ・ロッキー氏は、１９９４年～１９９５年にペンタゴンの劣化ウランプロ ジェクトの責任者であった。同氏は、上記プロジェクトにつき、検事団の質問に以下 のとおり回答している（甲１２４）。 即ち、ペンタゴンの劣化ウランプロジェクト結成の経緯は、「イギリス、オーストラ リア、カナダ、ドイツなどの将校を集めて劣化ウラン弾の危険性を研究するプロジェ クトが結成され、私は軍からこのプロジェクトを指揮するように言われた。プロジェ クトの目的は、戦闘に行く兵士のために、劣化ウラン弾兵器を使ったときの危険性・ 害悪を明らかにし、どのような対応策、予防策があるかを明確にして教育する、劣化 ウラン弾をどのようにクリーンアップしたらよいかを提案する、ということだっ た。」と述べる。 そして、「私たちは勧告を出したが、われわれの勧告が全く無視された」「米軍は未 だに何ら対策を打っていない」「私たちはクリーンアップが大事だと提案したが、現 実には完全なクリーンアップはできない。そこで、私たちは二度と劣化ウラン弾を使 うなという提言をした。しかし、私たちの提言はアメリカ上層部で無視され、ＮＡＴ Ｏ，イギリス、オーストラリア、その他の国々で全面的に無視された」と述べてい る。 さらに、ダグ・ロッキー氏は、ペンタゴンのプロジェクトが劣化ウラン弾に関するビ デオ・テープを作成した、として、「劣化ウラン弾プロジェクトの一環として、私た ちは劣化ウラン弾に関して複数のビデオテープを作った。１本目は、劣化ウラン弾が 爆発したときにどういう危険があるかということを警告するもの、２本目はクリーン アップするときのマニュアル、３本目は、放射能を測る際のやり方に関するもので、 ガイカーカウンターが劣化ウラン弾の測定には効かないことを明らかにした。４本目 は、劣化ウラン弾の残滓を破壊するにはどういう設備を使うべきかについて、５本目 は、不発弾をどう扱うべきか、というものだった。」と述べ、「これは特に危険な赴 く兵隊達のために作ったものだが、使われることはついになかった」と述べている （甲１２４，１３４，甲１６１）。 アメリカは、劣化ウラン弾のプロジェクトを始めたものの、劣化ウラン弾の危険性が 極めて高く、使用すべきではない、という報告が出されたため、プロジェクトの研究 結果を封印したのである。これら報告やビデオが流出することで、劣化ウラン弾の危 険性が対外的に明らかになり、国際的批判を浴び、二度と劣化ウラン弾を使用できな くなることを怖れたのである。こうして、ダグ・ロッキ氏らの提言を無視し、劣化ウ ラン弾プロジェクトを解散させ、二度と兵士に対する劣化ウラン弾の予防・治療を行 わなくなったのである。 キ 劣化ウラン弾を使用しつづけるのは何故か アメリカが様々な国際的批判にも関わらず、この猛毒兵器である劣化ウラン弾を使 用しつづけるのは、単にコストが安いとか、貫通力が高く軍事的に優れているからだ けできない。これはアメリカの核使用戦略実現のための一里塚である。 アメリカは、現在、第４世代型核兵器（第一世代が原爆、第二世代が水爆、第三世 代が中性子爆弾）を開発し実戦に使用することを狙っている。 その典型は、いわゆる小型核兵器であり、精密誘導弾を使って攻撃対象のみを対象と し、核兵器の巨大な破壊力で破壊することが企図されている（甲１６２ アメリカ核 戦略見直しレポート）。 アメリカは、この第４世代型核兵器を実戦に使用する露払いとして、イラクにおいて も、バルカン、コソボにおいても、そしてアフガニスタンにおいても、他の兵器に よって代替可能であるにも関わらず、人体にとって極めて危険性の高い劣化ウラン弾 を使用しつづけている。 即ち、仮に小型核兵器が、アメリカが主張するようにテロリストの地下施設など、攻 撃対象のみに限定したものであったとしても、核爆発に伴い著しいウラニウム汚染が もたらされることとなり、極めて甚大な人体・環境汚染を引き起こす。 この点、アメリカは、劣化ウラン弾の使用によるウラニウムの人体・環境汚染を隠蔽 し、劣化ウラン使用によるウラニウム汚染が許容範囲のものであることを世界に向け て強調し、第４世代型核兵器がもたらすウラニウム汚染もこれと同等であることを示 している。かくして、第４世代型核兵器使用を国際社会に許容させようとしているも のである（甲１３１）。 アメリカは、何の罪もない人々を、自らの核兵器使用のための人体実験に晒し、踏み 台にしているものにほかならないのである。 （５）ＷＨＯレポートとECRR報告 国際機関は、アメリカが劣化ウラン兵器について、その危険性を否定しつづける 中にあって、ＷＨＯ（世界保健機関）は、劣化ウラン弾の危険性を否定する立場に 立っている。 また、ＩＣＲＰ（国際放射能保護機関）も、低量放射能の危険性につ いて否定的な見解を発表していた。 しかしながら、ＷＨＯは最新のレポートにおいて、劣化ウラン弾の人体への危険性に ついに言及するに至った（甲１２３）。 欧州議会の付託によって作られたＥＣＲＲ（ヨーロッパ放射線リスク検討委員会） は、放射能に関する第一級の専門家を集めて１９９７年から調査活動を実施していた が、２００３年に至り、その調査結果が発表された（甲１４１）。 この調査結果は、ＩＣＲＰの調査結果が誤っており、低量放射能の人体への汚染の危 険性が極めて高いことを明らかにしたものであり、ＩＣＲＰの調査結果を覆す結果と なった。２００３年１０月にドイツ・ハンブルグで開催されたウラニウム兵器に関す る国際会議・科学者会議は、科学者決議を発表し、ＩＣＲＰのリスク評価が完全に誤 りであり、「石炭を遠くから囲むのと、石炭を口に入れることの違いを混同したよう な誤り」であると強く批判した（甲１６６）。これまで、低レベル放射能が、人体へ の貫通力がないことを理由としてその危険性を否定されてきたが、超微粒子の低レベ ル放射能がひとたび人体に入った際の体内での放射能リスクの高さはいまや、科学者 の間で常識となっている。 （６） アフガニスタンにおける放射能汚染の実情 ア アフガニスタンのウラニウム汚染は広島型の８０００倍以上にのぼる アフガニスタンにおいて使用された劣化ウラン弾は前述のとおり５００～６００トン である。これは、極めて多量の放射性物質が撒き散らされたことを意味する。 ① 琉球大学の矢ケ崎克馬教授によれば、広島型原爆で核爆発により広島に拡散され たウラニウム２３５の総量は、トータルで６１．２キログラムである。 そして、矢ケ崎教授は、仮に、イラク戦争で指摘される８００トンの劣化ウラン弾が 使用されたとすれば、広島型原爆の1万３０００回のウラニウム汚染に相当する、と 結論づけている（甲１５９）。 アフガニスタンで使用された劣化ウラン弾が最低でも５００トンであることから、同 様に計算をすると、アフガニスタンの劣化ウランによるウラニウム汚染は、広島型原 爆の約８１７０回分に相当することになる。 ② 広島型原爆は、爆発に伴う主としてガンマ線の放射能被爆に基づく未曾有の死者 数を出したものに止まらず、投下後に爆心地に接近して放射能を吸い込む等して二次 被爆した人々、「黒い雨」にあたって二次被爆した人々等、深刻な体内被曝による犠 牲が発生している。 ところが、アフガニスタンでは、広島型原爆の約８１７０回分に相当する大量の放 射能が全土にばら撒かれたこととなるのであり、その放射能汚染は想像を絶するもの と言わなければならない。 劣化ウランの放射性が天然ウラニウムの６０パーセントと評価したとしても、体内被 曝の発生する危険性は広島型原爆に比しても著しいものと言わなければならない。 アフガニスタンではこのような極めて深刻なウラニウム汚染がそのまま放置されてい るのである。 イ ＵＭＲＣの調査結果（甲１２０） ① 放射線医学と放射線学の専門家で、全米科学顧問であり、湾岸戦争後にアメリカ の復員軍人省が作った核医学のクリニックの責任者であった医師アサフ・ドラコビッ チ氏は、カナダを拠点とする独立した研究機関である「ウラニウム医療研究セン ター」（ＵＭＲＣ）を設立し、過去数年以上にわたって、米、英、カナダの兵士と民 間人の劣化ウラン汚染を検査しつづけてきた。 ＵＭＲＣの２つの科学チームは、２００１年～２００２年の戦闘直後に、アフガニ スタンで調査を行った。最初のチームは２００２年６月に到着し、ジャララバード地 域を集中的に調査した。第二のチームは、その４か月後にカブールを含めて広範な調 査を行った。調査団は、調査中に採取された尿と土壌のサンプルを持ち帰り、その内 容を分析した。 ② ＵＭＲＣが上記調査につき公表した結果は衝撃的なものであった。 即ち、ジャララバードの被験者から採取された検査物は、通常の住民のものをはるか に超えて通常の４００～２０００倍のウラニウム濃度を示す結果となった。これは、 極めて高度のウラニウム汚染である。 そして、このサンプルから採取されたウラニウムのアイソトープを分析した結果、 このアイソトープは、Ｕ２３５を約０．７２％含み、Ｕ２３８が９９．２７％ほど、 Ｕ２３４が０．００５４ほどの組成であるが、それだけではなく、ごく微量のＵ２３ ６が包含されていることが明らかになった（甲１２０）。 このウラン２３６は天然界には存在せず、プルトニウム抽出過程で人工的にしか生成 されない物質である。 従って、この汚染について「天然ウラン」という言い逃れは通用しない。これは、ま さに米コロラド州ボルダー等の核兵器工場でプルトニウム抽出過程で生成される劣化 ウランであり、これはアメリカが劣化ウランを使用したことの何よりの証拠にほかな らない。 前記のとおり、この種類の、使用済み核燃料から作り出された劣化ウランは、天然ウ ランから作り出された劣化ウランと比べれば、総活動量で０．１５％、アルファ線量 にして０．５％高い性質を有する。 従って、アフガニスタンにおける劣化ウラン弾汚染は、天然ウランから作り出された 劣化ウラン弾のこれまでの被害に比較しても極めて深刻な結果をもたらす危険性が極 めて高い。 ③ さらに、ＵＭＲＣ調査団によれば、米英の高濃度爆撃に直接さらされたカブール の人々は、ウラニウム被爆と符号する極度の兆候を示した。これら兆候の中には、関 節の痛み、背中または腎臓の痛み、筋肉の衰弱、記憶障害や記憶の混乱、部位感覚喪 失などがある。爆撃にされされた人々は流感タイプの疾病、出血、血液の染み出てい る粘膜などの症状にみまわれているという。ＵＭＲＣは、これらの症状の多くは、湾 岸戦争とバルカン戦争の退役軍人と民間人に見出されている、と指摘している（甲１ １９）。 ウ アフガニスタンにおける身体被害は既に発生している。 ① アフガン・ＤＵ・リカバリー・ファンドを設立したアフガニスタン人、マハメッ ド・ダウド・ミラキ氏は、アフガニスタンにおける深刻な劣化ウラン被害について、 二つの論文を発表している（甲１３７，１３８）。これらレポートは、ミラキ氏が赤 十字現地事務所や公共保険機関等に勤務する友人・知人が行った調査につき、匿名で 情報提供を受けたものであり、これら現地職員はアフガニスタンの複雑な政治・軍事 情勢から、匿名での情報提供しかできない状況だとのことである（甲１３６ ビデ オ）。 ② レポートによれば、早くも、パクティア、ナンガハル、バグラム、マザリ・シャ リフにおいて、新生児に奇形が発生している。 トラボラやバグラム、クンドゥズ、マザリシャリフでは多くのタリバン兵が口、耳、 鼻などから血が止まらない状況で、そのまま死ぬ者も出たという。 ナンガハルのカラム村は米軍の空爆によって完璧に破壊されたが、そこでは多くの 人々が何らの肉体的損傷を伴わずに死んだと報告されている。 コーストの公共保険機関に勤務する者からは、いくつかの皮膚損傷の症例が報告さ れ、パクティアでは新生児が生殖器の奇形を伴って誕生したことが報告されている。 ③ レポートには、以下のとおり、劣化ウラン弾被害者自身の数多くの証言が紹介さ れている。 ラグマンに在住するジョーマ・カーンは、２００３年３月に、「私は奇形の孫を見 たとき、私の未来に対する希望が消えていくのを感じた。それは、長男がロシアの侵 攻で息子を失ったときとはまた異なるものであった。私たちはアメリカから目に見る ことのできないジェノサイドを受けていて逃れることはできない」と語った。 パクティア在住のアクバルカーンは、２００３年２月に、「私は少しずつ死に近づい ている。尿に血が混じり、腎臓には痛みが走り、呼吸が困難だ。私の家族の多くも不 調を訴えている。妊娠した女性は流産したり、奇形児を生んだりしている」と述べて いる。 パクティアに住むアサドゥラーは、２００３年３月、「私の小さい息子の、モンス ターのような赤い腫瘍を見たとき、何故アメリカ人は彼らが嫌われるのかわからない のだろうか、と思った」と述べた。 クンドゥズで空爆の被害にあったザー・ゴーンは２００２年１２月、「妻が妊娠し私 たちは子どもの誕生を楽しみに待っていた。妻は運ばれるとき、気分が悪く腹部が痛 いと訴えた。私と妻の間の子どもが生まれたとき、それは到底人間ではなかった。妻 は子どもを見てショックを受け、５時間後に死亡した」と訴えた。 レポートには、このような証言が他にいくつも記載されている。 ④ これら症状は、いずれも、過去に現われた劣化ウラン弾の症状と共通するもので ある。即ち、先天性異常、奇形児、流産、皮膚損傷は、まさに、イラクの劣化ウラン 被害と共通するものであり、出血はＵＭＲＣ報告と共通し、湾岸等の退役軍人に見ら れる症状である。 また、身体損傷がないまま死亡するケースは過剰なウラニウム汚 染による急性白血病の可能性が高い。腎臓障害は劣化ウランの典型的症状である。 以上のレポートに記された被害が、アフガスタンへの劣化ウラン攻撃による被害であ ることは明らかである。 貧しい、アメリカ軍が未だ駐留を続けるアフガニスタンにおいて、これらの死はほ とんど国内メディアで取り上げられることなく、人々は静かに犠牲になっているので ある。 まさにサイレント・ジェノサイド－静かなる大虐殺が行われているのである。 エ 被害はさらに拡大する。 ① しかしながら、悲しいことに、アフガニスタンにおける劣化ウラン弾被害はまだ 始まったばかりなのである。今後、劣化ウラン弾の細かい粒子は水や食糧、空気を通 じてさらにアフガニスタンの人々の身体に取り込まれていき、放射能汚染が人体で蓄 積していくこととなる。こうした放射性物質の身体への蓄積により、数年間の間に 癌、白血病、先天性異常が急増し、極めて深刻な被害をアフガニスタンの人々に巻き 起こすことは必至である。イラクで起こっている悲劇がアフガニスタンで再び繰り返 されることとなる。 ② とりわけ、アフガニスタンで危惧されるのは、劣化ウラン貫通体を装着したバン カーバスター弾による洞窟攻撃が頻繁に行われたことである。このような洞窟攻撃の 結果、劣化ウランは酸化ウランとなって地中深くを汚染し、酸化ウランかは地下水に 溶け出し、地下水を汚染していくこととなろう。Ｕ２３８の半減期に照らせば、この 慢性的な地下水のウラニウム汚染はおよそ半永久的に続くこととなる。 アフガニスタンの人々は今、長年の旱魃と戦争から何とか自らの生活を立て直し、農 業を復興しようとしている。井戸を掘って地下水をくみ上げ、旱魃で干上がったカ レーズをよみがえらせ、ここから、自らの生命の源となる食糧を作り出そうとしてい るのである。 しかしながら、そのような生きる糧となる、地下水が劣化ウラン弾によって半永久的 にウラニウムによって汚染されつづけていくのである。 そしてウラニウムによって汚染された水を飲み、汚染された農業用水で作られた食物 を食べる人々は、ウラニウムによって体を蝕まれていくのである。 ③ 劣化ウランは、極めて広範な罪もない人々に、彼らが何も知らないうちに彼らの 体内に侵入していく。そして、性交渉を通じて配偶者をも汚染し、遺伝子の損傷を通 じて先天性異常出産を次々と生み出し、新しい世代に引き継がれていく。この連鎖は 果てしなく続くこととなる。 米軍の劣化ウラン弾使用は、アフガニスタンの人々にとって将来をも奪う取り返しの つかない犯罪行為を行ったというほかないのである。 （７） 劣化ウラン弾使用は明らかな戦争犯罪 ア このような劣化ウラン弾兵器の使用は明らかに、国際人道法に明確に反する違法 なものである。 劣化ウラン弾は、明らかに戦闘員と否とに関わらず、戦闘終了後も無差別に人々を 苦しめつづけ、死に至らせ、不必要な苦痛を与える兵器である。そして劣化ウラン弾 が大量のウラニウムを撒き散らすものであり、そのウラニウムはわずか１μミリ粒子 でも完全にがん細胞を発生させるものであることに鑑みれば、高い致死性を有する大 量殺戮兵器である。 国際人道法の示す区別原則に従えば、兵器使用は戦場で、軍事目標のみに限定さ れ、かつ戦争中に限定されなければならないが、微粒子になって広範に飛散し、戦争 終結後もその毒性を失わない劣化ウラン弾は必然的に軍事目標でない者に広範に被害 をもたらすものであって、明白に区別原則に違反し、違法な無差別兵器に該当する。 そして、国際人道法は、不必要な苦痛を伴う外的手段を禁止するところ、劣化ウラ ン弾のもたらす人体影響は、詳述してきたとおり、明らかに過度の苦痛を人類にもた らすものにほかならない。しかもタングステン等、他のより危害の少ない手段で代替 しうるのであるから、劣化ウランによってもたらされる苦痛が「不必要な苦痛」であ ることもまた明白である（甲１６５）。 既に、１９９６年国連人権小委員会は、劣化ウラン弾を使用できない無差別兵器とし て違法であり、使用を禁止すべきだとする決議を採択している（甲１５３）。 特別な条約がないとしても、既に劣化ウラン弾兵器は明らかな無差別・残虐兵器とし て国際人道法上許容し得ない違法な兵器であることは明らかである。 イ 米軍の故意 米軍はこのように、劣化ウラン兵器が人体・環境にとって恐ろしい効果を有すること を１９４３年から既に熟知しつつ、５００トンもの大量の劣化ウラン兵器を使用した ものであり、アフガニスタン人を殺害し、深刻な苦痛を引き起こし、重大な傷害を与 えることについて故意を有していたことは明らかである。 ウ 以上より、アメリカによる劣化ウラン爆弾投下は明らかに「故意による殺害」 （ＩＣＴＡ規程第３条１ａ），「身体または健康に故意によって深刻な苦痛を引き起 こし，または重大な傷害を与えること」（ＩＣＴＡ規程第３条１ｂ），「一般住民ま たは敵対行為に直接参加していない民間の個人に対する意図的な攻撃」（ＩＣＴＡ規 程第３条２ａ），「過剰な傷害もしくは不必要な苦痛を生じさせる性質を帯び，また は武力紛争に関する国際法に違反してそもそも無差別な兵器，投擲物及び物質ならび に戦闘手段を使用すること」（ＩＣＴＡ規程第３条２ｏ）に該当する。許し難い戦争 犯罪である。 また、劣化ウラン弾投下は、アフガン全土で広範に展開された非人道的行為であり、 ウラニウム汚染によって人々を殺し、著しい苦痛に陥れ、遺伝子異常や環境の永続的 破壊によって、将来の世代にわたってこの健康を著しく阻害し、将来の世代をも蝕 み、奪おうとする攻撃であって、「武力紛争において民間人に対し、広範な攻撃また は系統的な攻撃の一環として行われた」「殺人」「せん滅」「その他の非人道的な行 為」（ＩＣＴＡ規程第４条ａ，ｂ，ｉ）に該当する。
＊＊＊◇＊＊＊◇＊＊＊◇＊＊＊◇＊＊＊◇＊＊＊◇＊＊＊◇＊＊＊◇＊＊＊◇ アフガニスタン国際戦犯民衆法廷（結審）のご案内です。（転載） ＊＊＊◇＊＊＊◇＊＊＊◇＊＊＊◇＊＊＊◇＊＊＊◇＊＊＊◇＊＊＊◇＊＊＊◇ アフガニスタン国際戦犯民衆法廷は１２月、結審を迎えます。 公判には８回に亘るアフガニスタン現地調査と１５回の公聴会で得られた証言が１ ２冊の証言集（公聴会記録）にまとめられ、法廷に積み上げられます。その主要な 部分は会場の大スクリーンに次々と映像で映し出されます。 加えて、法廷には、アフガニスタンから来日する戦争被害者とアメリカから来日す る「9・１１」事件被害者遺族が同席し、ともに証言台に立ち、証言します。 法廷では、ブッシュ大統領の戦争犯罪に対する判決（主文）を下します。 同時に、法廷では、戦争の根絶―平和な２１世紀に向け、（１）戦争被害者の補 償、（２）国際紛争の平和的解決、そして、（３）劣化ウラン弾・クラスター爆弾 禁止国際条約締結を求める勧告を全世界に向け発信します。 公判への参加、ご協力をお願い致します。 公判日時 ◎ ２００３年１２月１３日（土）（第２回公判） ◎ ２００３年１２月１４日（日）（第３回公判・結審） １０時開場。 １０時３０分開廷。 １７時閉廷。 場 所 九段会館、大ホール ◎ 住所：千代田区九段南１－６－５ ◎電話：０３－３２６１－５５２１ ◎ 交通：地下鉄東西線／地下鉄新宿線／地下鉄半蔵門線 「九段下」下車、④番出口徒歩１分。 公判の主な内容 ◎ 特別顧問、ラムゼー・クラーク氏からのあいさつ（予定） ◎ 劣化ウラン弾使用に関する起訴状（追加） ◎ 証言 （１） ブッシュ政権の先制攻撃戦略批判（アメリカから） （２） ９・１１テロ犠牲者遺族 （３） アフガニスタン戦争被害者 （４） アフガニスタンでの劣化ウラン弾使用とその被害 ◎ アミカスキュリエからの反論と論点整理。 ◎ 検事団からの論告 ◎ 判決（主文）。 ◎ 勧告。 法廷は次の人々で構成されています。 ＜主催者＞ （特別顧問） ラムゼー・クラーク（元アメリカ司法長官。ＩＡＣ） （共同代表） 前田 朗（東京造形大学教授） 伊藤 成彦（中央大学名誉教授） サラ・フランダース（ＩＡＣ） アフガニスタン女性革命協会（ＲＡＷＡ） 山内 徳信（元沖縄県読谷村長） ＜裁判長＞ 新倉 修（青山学院大学法学部教授） ＜判 事＞ 水島 朝穂（早稲田大学法学部教授） ロバート・イアン・アクロイド（元アストン大学法学部長・イギリス） ピーター・アーリンダ（ウイリアム・ミッチェル大学教授・アメリカ） ニルファー・バグアット（ボンベイ大学法学部教授・インド） ＜検事団団長＞ 土屋 公献（弁護士・元日本弁護士連合会会長） ＜同副団長＞ 山口 広（弁護士） ＜同事務局長＞ 猿田 佐世（弁護士） ＜ 検 事 ＞ マイケル・ウォーレン（弁護士・アメリカ） アニャ・ムカルジ・コノリ（弁護士・アメリカ） ジョージ・シェル（大学教授・ドイツ） 伊藤 和子（弁護士・日本） 加賀美 有人（弁護士・日本） 上山 勤（弁護士・日本） 神原 元（弁護士・日本 田部 知江子（弁護士・日本） 土井 香苗（弁護士・日本） 成見 暁子（弁護士・日本） 萩尾 健太（弁護士・日本） 田場 暁生（弁護士・日本） 久保木 亮介（弁護士・日本） ◆ 参加費 ◎ １日：２０００円／２日通し：３０００円（学生以下半額） ◆ 宿泊 ◎ 実行委員会で格安ホテルを斡旋。学生は民泊を準備しています。 ◆ 申し込み方法 ◎ アフガニスタン国際戦犯民衆法廷（ＩＣＴＡ）事務所へファックスまたは電話 で。 お近くの実行委委員もチケットを扱っていますので申し出て下さい。 ◆ 連絡先：ＩＣＴＡ事務所 ◎ 住所：〒101－0061 東京都千代田区三崎町２－１２－９ 大信ビル３０２ ◎ 電話／ＦＡＸ：０３－３２３０－４４２２ ◎ ＵＲＬ：http//afghan-tribunal.3005.net/ ◎ Ｅ-mail ：afghan@afghan-tribunal.3005.net ◆ 振込み先（郵便振替） ◎ 口座番号：００１２０－４－５７４４４６ ◎ 加入者名：アフガン戦犯法廷実行委員会